Books だらり庵

面白かった本、訪ねた本屋さん、撮った写真なんかについてだらだら綴ります。ごゆっくり。

あなたの「撮っておきの1冊」を教えてください! ホントレート18撮目

皆さん、こんにちは。

今日もだらだらしてますか?

どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。

 

「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」

そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」

 

18回目となる今回は、ファッションや写真、ガジェットといったモノに視線が行きがちなブログが多い中、他とは少し違う体温を感じる記事を楽しませてくれるブロガーさんが教えてくれた1冊です。選んだ理由もなにも、1冊選ぶとしたらこれ!これしかない!と豪語し、グイグイ紹介してくれました。いったいどんな「撮っておきの1冊」だったのでしょうか、早速教えてもらいましょう!

 

 

お話を伺った人

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平岡雄太さん

 1990年生まれ。東京都在住。株式会社drip代表取締役COO。「好きなものに囲まれる」をテーマにwebマガジン「DRESS CODE.」でファッションやカメラ、写真などについての情報を発信。魅力的な特集記事を得意とする。なかでも、記事中の写真を全てフィルムで撮影している連載インタビュー「#私がフィルムカメラを使う理由」は圧巻の企画性とクオリティ。読めばフィルムカメラが使いたくなること間違いなしのオススメ連載。

www.fukulow.info

 

やる気に満ちた状態から、さらに一歩勢いづけてくれる1冊。

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 毎回この瞬間を楽しみにしている、お話を聞かせてくれる方が本を取り出す瞬間。平岡さんにもいつも通り逸る気持ちを抑えつつ、揉み手しながら本は何かと問いかける。そこで氏がおもむろに取り出したのが、こちらの本。

って、え……?

あ、あの平岡さんブックカバーがですね、その、これじゃ本のタイトルが分からないというかなんというか……。

「これはこの本のためだけに使っているブックカバーなんです。他の本はほとんど読み返すこともないまま売っちゃったりするんですが、この本だけは別。唯一読み返す本だから、こうしてブックカバーでちゃんと保護しているんです」

両目から鯛一尾分の鱗が落ちました。性急に過ぎた己を恥じた庵主です。座右の書を大切にする気持ちをきちんと形にしている姿に感銘を受けました。

ちなみに気になる本はというと、岡本太郎『自分の中に毒を持て』でした。

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ファッションやフィルム写真にこだわりのある平岡さんですから、アートにも造詣が深いのかと思いきや、岡本太郎のアート自体には興味がないといいます。

「僕は割と彼のことは思想家だと思っているんです。芸術家の岡本太郎についてはあまり知らないけれど、思想家として彼が持っている側面が好きですね。この本も生き方や人生論みたいなところが中心になっているんですよ」 

芸術は爆発だ!」という有名な言葉の印象があまりに強く、エキセントリックでパワフルな芸術家のモデルのように思われがちな岡本太郎ですが、実は思索的な面でも学ぶところが多いと語る平岡さん。大学時代に勧められ、初めて読んだ時にこれまで自身が持っていた価値観は崩壊したといいます。

特に最終章の最後の項「人類の滅亡」は鳥肌が立つほど感動したそう。長くなってしまうので泣く泣く割愛しますが、インタビューの途中で該当の箇所を平岡さん自ら読みあげてくださるほど強く印象に残っているようです。

そんな『自分の中に毒を持て』は読むタイミングを選ぶ本のようです。岡本太郎の作品に見られるプリミティブな衝動をむき出しにしたエネルギーは、彼の書く文章にも表れているようで、自分自身が頑張れていない時には読めないのだそうです。

「叱られてるみたいになるんで、岡本太郎に顔向けできないような状態では読めないんですよね笑」と苦笑する平岡さん。

手加減なしの真っ向勝負な文章たちには、自身が勢いづいている時に向き合うのが良いといいます。言葉の持つエネルギーがさらに勢いを加速させてくれる気さえするのだそう。

「言葉の力」とはよく耳にする言い回しですが、平岡さんの場合は実感が伴っているだけに、質量を感じずにはいられませんでした。僕も岡本太郎に背中押されたいです。

 

読み返すことで昔の自分と会話をしている。

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今でこそ会社を立ち上げて、人前で話をすることも増えた平岡さんですが、昔はとても周りの目が気になるタイプの人間だったといいます。今もそれはそうなんだけどと前置きしながらも「なんやかんやと言われることも増えたけれど、あまり気にせずに自分が良いと思ってるならいいやと思えるようになったのも、この本がきっかけだったのかもしれません」といいます。

自身の今の在り方、世界と対峙する姿勢を正してくれた本だけに、付箋もたくさん貼ってありました。

「付箋を貼ったところを読み返すと、あー昔自分はここを良いと思ったんだなというのがなんとなく分かって、昔の自分と会話しているような感じもありますね。面白いことに共感部分は時とともに更新されていて、へー、そこに共感していたんだ、この時はこうしようとしていたんだみたいなのが垣間見えて面白いです笑」

何気なくお話されていましたが、過去の自分と向き合うには結構なエネルギーがいると思うのですが、平岡さんはそれすらも楽しんでいるようでした。おまけに何度も付箋=過去の自分と向かい合ってきたからか「たくさん付箋していますけど、案外今読んでもその箇所のことを覚えているんで、そういう意味ではもう自分の中に相当刷り込まれているんですかね」と不敵な笑みさえ浮かべておられました。

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耕すように付き合っていきたい、土壌のような1冊。 

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 最低でも本書を1年に1回は読み返すという平岡さん。他にも岡本太郎の著書は読んできたそうなのですが、やはりこの1冊に並ぶものはないといいます。

「結構有名な本なので、2、3年に1回ぐらいこの本が1番好きという人に会うことがあるんです。今までにも何人かいたんですけど、そういう人とはあまり話さなくてもすごく深く分かり合える気がするんですよね。この本を良いと思っている人は結構信頼してしまいます」

そして嬉しいことに、笑顔でこんなことも。

「いつか誰かの撮っておきの1冊で被ってほしいなんて思ってるんですよね。めっちゃ良い本やから笑」

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そんな本書と出会っていなかったら平岡さんの人生はどうなっていただろうか、最後にそんな質問をぶつけてみると、それまでの人懐っこく穏やかな表情をしまいこんで、真剣な表情で答えてくれました。

「この本と出会っていなかったら。土台の部分から今とは全然違っていたと思います。木で例えると、植わっている土から違っているから、幹も枝も、葉っぱも違うものが生えてきていたはず。全然違う人生になっていたと思います。そのぐらいの影響を受けていますね」

実は4年ほど前に自身のブログで『自分の中に毒を持て』を紹介しているそうです。

「全然紹介とかしなくていいんだけども、自分で記事に書くぐらい好きなのよ」

www.fukulow.info

それほどの熱意をもって向き合う1冊との付き合い方にも、平岡さん独自の哲学がありました。

「これは何か自分の人生の節目とかそういうタイミングで背中を押してもらうために読む本じゃないんです。都合のいいツールじゃない。枝葉のようなところをああだこうだするための道具じゃなく、自分自身の土壌をしっかり耕したりするようなところでこの本とは付き合ってきたし、これからもそうしていきたいと思っています」

1人の人間と、1冊の本が対等に向かい合っている真剣勝負の読書を見せてもらったような気がしました。

 

撮影を終えて

いつも記事を楽しませてもらっている一読者として、平岡さんはファッション系の雑誌を持って来たりするのかなあ、などと思っていました。「分かってないなあ、分かってない笑」といたずらっ子のような笑顔で語っていた平岡さん。ひとたび『自分の中に毒を持て』について語り出すと、まさに夢中といった様子でポンポンとお話が飛び出してきたのが印象的でした。

深いところで1冊の本と向き合う姿勢に、平岡さんの記事の中でのファッションアイテムや写真との向き合い方に何となく共通するようなものが見えたような気がしました。

真剣なのに楽しませてくれる平岡さんから、ますます目が離せないなあ、と思った今回の取材でした。

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というわけで第18回目のホントレートはここまで。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!

 

 

 

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