Books だらり庵

面白かった本、訪ねた本屋さん、撮った写真なんかについてだらだら綴ります。ごゆっくり。

あなたの「撮っておきの1冊」を教えてください! ホントレート20撮目

皆さん、こんにちは。

今日もだらだらしてますか?

どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。

 

「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」

そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」

20回目となる今回は、音楽、旅、漫画に写真と幅広い趣味を自分のペースで楽しむ素敵な女性が教えてくれた1冊です。初めて出会った時から歳月を重ね、自分の中でその本が持つ意味が変わってきたという1冊、気になります。いったいどんな「撮っておきの1冊」だったのでしょうか、早速教えてもらいましょう!

 

 

お話を伺った人

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タケウチさん

1993年生まれ。愛知県在住。社会人として働きながら、自由を求めて旅に出ては、写真を撮ったり、ライブやフェスで音楽を浴びている。持っている楽器はジャズベース(弾けない)出かけた先で撮った写真などを、運営するブログ「TAKE#5」でマイペースに公開中。ブログのテーマは「旅と写真と日々の記録」好きな言葉は「我が道を行く」

tk9305.com

 

手放せないのはなぜだろう、な1冊。

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ある日、高校1年生だったタケウチさんがラジオをつけていると、聴き慣れた歌声が飛び込んできました。声の主は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONアジカン)のヴォーカル後藤正文さん。小学4年生の頃からアジカンの大ファンだというタケウチさんがこの時耳にした新曲のタイトルは「ソラニン

これがタケウチさんの「撮っておきの1冊」浅野いにおソラニン』との出会いのきっかけでした。

もともと漫画の方の『ソラニン』のことも、作者の浅野いにおさんのことも知らなかったというタケウチさん。アジカンの楽曲が主題歌になっている映画『ソラニン』を観る前に原作漫画を購入したそうです。

当時すでに音楽が大好きだったタケウチさんは「バンドいいよな〜」という気持ちで読んでいたといいます。印象としても、独特な雰囲気の「音楽系漫画」というくらいのものだったようです。

とはいえ大好きなアジカンと関わりのある漫画ということで、シングルCDとセットにして周りの人たちに貸し出していたそう(アジカンを聴いて欲しいがゆえの、抱き合わせというやつですね笑)

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たくさん読み返すわけでもないという、ゆるい付き合い方をしていた『ソラニン』ですが、県外の大学に進学した際にも実家から連れてきて、そばに置いていたといいます。

「自分でもよくわからないんですけど、なぜか置いてありましたね笑 ズルズルと今でも一緒にいる。なんででしょう」

こう語るタケウチさんですが、社会人として世に出た彼女にとってのこの本は、また別な意味を持つ1冊になっていったようです。

 

ソラニンの毒を知る。

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ソラニン」あまり耳慣れない言葉ですが、神経に作用する毒素で、ジャガイモの表皮や芽に含まれているものです。作中にも言及はありますが、タイトルの意味を知るとまた違った見方ができそうです。

漫画版に含有されているこの毒は、実は高校生には効きません。ある一定の段階に達した人間にだけじわじわ効いてくる、とても恐ろしいものなのです……。ご多分に漏れず、社会人となったタケウチさんにもこの毒はまわってしまったようです。

2017年11月、全2巻+新作2話を収録した新装版『ソラニン』を手に入れたタケウチさん。単行本を持っていたにも関わらず「新作収録」というワードに惹かれたのだそう。

改めて『ソラニン』を読みなおしたタケウチさんは思いがけないパンチを喰らいます。かつて読んでいた頃とは、全く違う読後感に襲われたのだといいます。

“恋愛混じり音楽系漫画”という印象から、“モラトリアムばんばんの社会人の苦悩を描いた漫画”に変わっていたのです。主人公の様子や苦悩が、自分のことを見ているようで気分が落ちたというタケウチさん。

なかなか自分の仕事に興味が持てず、なんとなく過ぎてゆく毎日。安定した休みと収入はありがたいけれど、どこか自分にとって勿体無い生き方をしているような気分になって「自由になりたい」と思ったり、口に出したり。高校生の頃には気付かなかった、ソラニンという「毒」にあてられていたようです。それでもこの漫画を嫌いにはなれないのだといいます。

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ソラニン』を「反面教師」のように思いつつも、登場人物の姿を羨ましく思うというタケウチさん。生き方に悩みながら、なんとなくでも自分の答えを見出した者、大切な人の死をきっかけに少しずつ成長していく者、そんな彼らと自分を引き比べてみても「まだまだ自分らしさの迷子状態にいる」と苦笑いを浮かべる彼女は少し寂しげ。

それでも今、写真が楽しくてたまらないというタケウチさん。彼女は謙遜しますが、彼女もまた『ソラニン』の登場人物たちのように、迷いながらも少しずつ変わりつつあるのかもしれません。

大学生の頃には「特にこれが好きだ」というものが見つけられずにいたという彼女が、昔からの「カメラに触れてみたい」という気持ちを社会人になるタイミングで行動に移したのも、どこかで昔読んだこの1冊が撒いた「種」が芽を出した1つの形なのではないでしょうか。

 

最高の場面を、さらに最高にする自分だけの工夫。

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最後にタケウチさんは「ソラニン』の中で1番好きな場面についてお話ししてくれました。単行本2巻 第27話で主人公が「ソラニン」をライブハウスで演奏する場面。まさにクライマックスというその瞬間、一生懸命ギターを弾きながら歌う主人公の姿とモノローグに涙目になるそうです。

そしてここで最も重要なのがアジカンの「ソラニン」をかけながら読むこと。漫画なので全ての表現は絵とセリフからなりますが、タケウチさんはそこに音楽を付け加えるというのです。漫画の中に登場する「ソラニン」をもとに作られた楽曲なので違和感がないのは当たり前ですが、主人公がギターをかき鳴らす姿と音が最高にマッチしていて、さらに目頭が熱くなるのだそう。

自分の好きなものと好きなものを掛け合わせてさらに最高なものを生み出すなんて、とても素敵な楽しみ方です。

悩みながらも自分だけの楽しみ方を身に付けている人は強い。『ソラニン』の登場人物のように「いつか自分も、1つのことに一生懸命になれるように…!」と意気込む彼女を待ち受けているのはどんな素敵な出会いなのでしょうか。

行く手に待ち受けるのは楽しいことばかりではないかもしれませんが、「毒」に触れ、己を知った今の彼女ならば、なんだってドンと来いだろうなあ、そう思いました。

 

撮影を終えて

お話を伺った数日後、タケウチさんからメッセージが届きました。インタビューの時に上手く話せていたか心配になったという彼女は、自分の『ソラニン」に対する思いを文章に書き起こして僕に送ってくれたのです。

彼女の気遣いと、文字に起こしたインタビューの内容が、送ってくれたテキストとしっかりリンクしていたことに彼女と『ソラニン』の付き合い方を見たような気がして、1人で嬉しくなっていました。

僕も今度主題歌と組み合わせて好きな漫画を読んでみようと思います。

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というわけで第20回目のホントレートはここまで。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!

 

 


 

 

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