Books だらり庵

面白かった本、訪ねた本屋さん、撮った写真なんかについてだらだら綴ります。ごゆっくり。

あなたの「撮っておきの1冊」を教えてください! ホントレート28撮目

皆さん、こんにちは。

今日もだらだらしてますか?

どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。

 

「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」

そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」

28回目となる今回は、今年京都に新しくオープンした今僕が最も注目している本屋さんが教えてくれた1冊です。誰もが求めてやまない「アレ」について書かれた本はまさに痛快、目からウロコが1尾分! いったいどんな「撮っておきの1冊」だったのでしょうか、早速教えてもらいましょう!

 

 

お話を伺った人

f:id:taroimo0629kuro:20190711002506j:plain

ニワノナオキさん

京都府在住。2019年5月、クリエイターの創作環境を整える場 “But not for me”を立ち上げ、店主として駆け出しのクリエイターたちの活動を見守る。個人向けの選書を行うBookstylistとしても活躍中。穏やかな人柄と、確かな知識に裏打ちされた選書は見事の一言。

twitter.com

 

“自分”を言語化せよ。

f:id:taroimo0629kuro:20190711004703j:plain

もともとアパレルで働いていたニワノさんは、とてもオシャレです。シンプルな白シャツが眩しく見えるほど。ここで思わず「センス良いですね」と言いたくなりますが、ニワノさんはその言葉は不用意に使わない方が良いと考えているようです。そう考えるようになったきっかけをもたらしたのが、ニワノさんの「撮っておきの1冊」 水野学『センスは知識からはじまる』なのでした。

水野さんといえば最強のゆるキャラくまモン」のデザインなどで知られるクリエイティブディレクターですが、意外なことにニワノさんはこの本に出会うまで彼のことを全く知らなかったのだそう。『センスは知識からはじまる』もたまたま本屋さんで見かけたのだといいます。

「このタイトルで完全にやられたんですよ。読んでみると分かるんですけど、言いたいことの全てをここまで端的にタイトルで言ってしまえるのって、相当すごいと思うんです。僕自身は熟読しましたけど、早い話がタイトルさえ見ちゃえば読まなくても良いとは思うんですよね。もちろんそれはとても勿体無いことですけど、それぐらいに衝撃的なタイトルでした」

この1冊ですっかり水野さんに惚れ込んでしまったというニワノさん。今では水野さんの著書はほとんど読んでしまったというのですから、どんな出会いがあるのか分からないもんです。f:id:taroimo0629kuro:20190711004511j:plain

熱量高くニワノさんが語ってくれたところによると、水野さんのすごいところは「言語化能力の高さ」にあるのだそうです。

「水野さんはクリエイティブディレクターなんですが、この本に限らずデザイン用語をほぼ使っていないんですよ。だから誰が読んでも分かる。ああ、そういうことか!って腹落ちさせる文章を書くのがめちゃめちゃ上手い」

水野さんの本と出会ってから、言語化の大切さがすごく分かるようになったというニワノさん。

「なんとなくふわっと理解していたようなことに言葉の定義をつけたり文章化することってすごく大事なんだなって。ごちゃごちゃと考えてはいたけど、あれ俺って全然文章書けないなって気付いたり、考えがまとまってないなと感じたり。センスとは、美意識とは、ビジョンとは、何となくみんな使っているんだけれど、それぞれの中にある定義は自分だけのものなんだということをちゃんと言葉で表さなきゃなと、この本を読んで気付きました」

どんなにすごいことを考えていたとしても、感覚でこれがカッコいいんですではなく、こういう理由でこのバランスになっています、こういう背景を踏まえた上でのこの書体のチョイスなんです等々、一つ一つの配置・選択の理由を語れることこそが、何となく作られたものとの差を明確にしてくれるんですね。自分の中から生まれたものに、自分の言葉を丁寧に添えてあげられるのが、真の意味でクリエイティブな人なのかもしれません。

 

蓄えよ、然るのち選び出せ。

f:id:taroimo0629kuro:20190711004536j:plain

ところで本書のタイトルにもある「センス」ってなんでしょうね。日常生活でもよく耳にする言葉ですが、それがいったいどんなものなのか、説明できますか?

「センスは生まれ持ったものだとみんな思っているじゃないですか。オシャレにしてもデザインにしても、写真にしても。でも水野さんはそうじゃないんだよと言うわけです。彼によればセンスっていうのは、膨大な知識の中から、それぞれに合った最適な答えを導き出す能力こそが、正しい意味でのセンスなんだそうです。それを読んで、そういうことか!と」

自分の中に知識がなければ、そもそも取捨選択の余地がありません。そういう意味で「センスは知識からはじまる」のですね。

いつもパッと見でボロボロの格好をしているのに、妙にオシャレに見えるアパレルの先輩がいたと話してくれたニワノさん。この人がまさにコンテキストのある、ある種の汚さ=ビンテージで統一することが自分に最適だと判断して、そういうファッションに落ち着いているのだと聞いた時に、ニワノさんの目からは鱗がボロボロと落ちたのだそう。

その先輩はストリート系、綺麗め、カジュアルなど色々経験する中で、ファッションに関する知識を頭の中の引き出しに収めていったのです。そうして出来上がった彼だけのファッションの引き出しの中から、自分に最適化された服を選んでいたから、カッコよかったのです。これがセンスなんだと、実例を通して気付いた経験だったとニワノさん。自分の体のサイジングが分かっている。その特徴に合う服を知っている。そういう服にはどの靴が合うのか。ボタンやポケット、ステッチの細部にわたって注意を払うことができているか。知らないものに対して注意は払えません。知ることで物事の見方の解像度が上がります。解像度の変化とともに、ニワノさんの服の選び方も変わったのだそう。

f:id:taroimo0629kuro:20190711004610j:plain

「それまでは洋服をそんなに深掘りしていなくて、いわゆる今流行っているモノとか、最近イケてるセレクトショップの取扱商品とか、明らかに今っぽいとか誰が見てもオシャレっぽい雰囲気の洋服がカッコいいと思っていたんですけど、あ、そうじゃないなと。それからはより知識を得ようと思って、リーバイスの勉強をしてみたり、先輩に色々な話を聞いたり、今日の僕のスタイリングどうですかなんて尋ねてみたりも。なんか違う、とか言われながらね笑 ちょっとボトムの丈違うくない? とか靴変えた方がえんちゃう? 前履いてたのの方がええで、とか。そういうのを積み重ねていくと、雰囲気が出てくるようになるもので、感度が高い人からオシャレだねと言われるようになっていったんですね」

『センスは知識からはじまる』を読んで自分の考えがすごくクリアになったというニワノさん。

「僕も今までは、先輩やからオシャレなんやろ、と思ってたんですよ。だって服屋ですやん、みたいな感じで笑 でも先輩はめちゃめちゃ服屋さん廻って最新の情報を仕入れつつ、試着しまくって自分に合うサイズ感を見出したり、ブランド背景を調べたりしているというベースがあるから、なんとなく買った服でもすごく似合うんですよね。自分に似合うかどうかの判断を最適化する能力が研ぎ澄まされているから、このブランドのこのサイズなら自分は大丈夫だみたいなことが、何気なくでもできるようになるんです。そういうことがセンスなんだなって」f:id:taroimo0629kuro:20190711004630j:plain

センスとは、特別な人に備わった才能ではないと本書には書かれています。知識をかき集め、最適化する能力を積めば、ある程度みんなセンスは良くなるのだと。そこでどうして違いが出てくるのか、それは磨いているか磨いていないか、たったそれだけの差なのだそう。「センス」言い訳との親和性が非常に高い言葉です。それゆえ何かを諦める時に使われがちな言葉でもあります。

「あの人はセンスがあるから」

「自分にはセンスがないから」

ついつい無意識のうちに口をついて出てしまうんですよね。でもそうした言説は、水野さんに言わせればただの「努力不足」だといいます。厳しい言葉ですが、現実としてそうなのでしょう。しかし、自分の努力不足を認識するところから始めることを決意した者に水野さんは手を差し伸べてもいるのだとニワノさん。

「知識を得なさいと。その方法はネットだろうが本だろうがなんだっていい、と。そこで終わるんじゃなくて、その知識を入れておく引き出しの整理の仕方を書いてくれているんです。1つの棚にごっちゃごちゃに詰め込んだらなんのこっちゃ分からないので、集めた知識はこういう風に入れていったら取り出しやすいよねとか、そもそも引き出しってこう作ったらいいんだよなんてことが書いてあるのがすごくいいと思うんです。水野さんは道筋を示すのもすごく上手いんですよね」

ぞっこんになる余り、平日は水野さんの企画運営するブランド「THE」でお仕事をしているというニワノさんに最後に、この本と出会って大きく変わった点について尋ねてみました。

「この本を読んでからセンスいいですね、という言葉を簡単には人に使えなくなりましたね。僕から見てセンスがいいなと思う人に対しては、積み重ねてきたものも透けて見えてくるので、センスって言葉は安易に使えないんです。その人が今の状態に至るまでの過程に対するリスペクトが抜け落ちてしまう気がしませんか? センスって言葉で片付けられちゃうと、何も努力してないように思われて。もともとセンスがいいからそんなことができるんですねすごーいって言ってるも同じだと思うんです。それはすごく失礼な話」

この本と出会っていなければ、自分の生まれ持ったモノだけで勝負していたかもしれないと、ニワノさんは微笑んでいました。それじゃあどこかで壁にぶつかった時に、絶対にセンスを言い訳にして潰れていた、とも。

駆け出しのクリエイターの創作を応援する場“But not for me”の店主として 、冗談めかして『センスは知識からはじまる』をこのお店に作品を置くための課題図書にしようかなと語るニワノさん。

「作り始めの人たちに、いきなりトップの人たちと比べてもそんなの意味ないよと。彼らは相当色々積んであの高さに立っているんだから。彼らと比べて現状自分がこうなのはセンスがないからじゃなくて、積んでないだけだよと。知識を積んだ結果ダメだったら、それはそれでまた別のやり方があると知れますし。ダメだったというのも自分のセンスがダメだったと考えるんじゃなく、自分のやっていることに対して、その取り組み方が最適でなかっただけのことと考えられるような頭を、この本で鍛えてもらいたいですね。クリエイターに関係なく、あらゆる人にこの本はオススメですよ」

センスが取り沙汰されない分野はありませんから、ニワノさんの言われるように、この本は全ての人の助けとなる1冊だと思います。センス云々と言ってくる人たちを軽く受け流すために『センスは知識からはじまる』を「知って」みませんか?

f:id:taroimo0629kuro:20190711004836j:plain

 

撮影を終えて

実は、ニワノさんとは昨年初めてお会いして以来の「二度目まして」でした。SNS上で彼が面白い本屋さんを始めるらしいと逐一チェックしていたのですが、コンセプトも内観も置いてある本のチョイスも、本当に素晴らしいお店が出来上がっていて、とても嬉しくなりました。彼の引き出しを総動員したような、彼自身というようなお店の雰囲気は、とても優しいものでした。だらり庵でも人に何かを強制したりということを避けるようにしているのですが、ニワノさんも似たような空気感を出そうとしているのに、勝手に親近感を覚えながらの撮影でした。「別に本を買ってもらわなくても、ここに来てカリモクで本を読んだり、僕とビール飲んだりなんかしてくれれば、それでいいんじゃないかな」撮影後に一緒にビールを飲みながら話せたの、本当に嬉しかったなあ。また遊びに行かなくちゃ。

f:id:taroimo0629kuro:20190711004902j:plain

というわけで第28回目のホントレートはここまで。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!

 

 

 

あなたと大好きな1冊の姿を写真に残しませんか?

ホントレートのご依頼は以下のメールアドレスまで

taroimo0629kuro@gmail.com

メールの件名を「撮っておきの1冊 ホントレート希望」としていただけますとありがたいです。