Books だらり庵

面白かった本、訪ねた本屋さん、撮った写真なんかについてだらだら綴ります。ごゆっくり。

あなたの「撮っておきの1冊」を教えてください! ホントレート30撮目

皆さん、こんにちは。

今日もだらだらしてますか?

どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。

 

「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」

そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」

 

 30回目となる今回は、最近僕の中で非常にアツい岐阜の魅力を紹介しているブロガーさんが教えてくれた1冊です。人生で最初に読んだ活字の本だというその1冊は児童書ながら、取材中に思わず涙が溢れそうになる瞬間もあった深く優しいお話でした。いったいどんな「撮っておきの1冊」だったのでしょうか、早速教えてもらいましょう。

 

 

お話を伺った人

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 くじらぐもさん

岐阜県在住。岐阜のいいところを発信するブログ「Hibi」を運営。カメラを片手に岐阜の様々なところへ精力的に出向き、素敵なスポットを発掘する日々。とりわけフィルムカメラで撮ることの多い喫茶店の紹介記事は目を見張るものが。記事を読んだ100人中150人が岐阜に遊びに行きたくなるほど魅力的。クリームソーダが大好き。

kujiragumo.me

 

活字に触れた、最初の1冊。

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小さい頃から本を読むのが好きだったというくじらぐもさん。お昼休みに友達と放課後何をするか話題になった時には「図書館に行きます」と言うようなお子さんだったそうで、小学校の図書館にあった本はほとんど読んでしまったんだとか。そんな彼女が「撮っておきの1冊」に選んだのは、自身の読書生活の原点だと語ってくれた、松谷みよ子『モモちゃんとプー』でした。1960年の初出以来、長きにわたり日本中の親子に親しまれてきた「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズの第2冊目です。

「お家の近くの公文式の教室に1冊だけ置いてあったのを読んだのが最初の出会いだったと思います。1回では読みきれないので、何回か公文式に通うことになって。お勉強しに行ってるんだか、本を読みに行ってるんだか分からないような状態になっていました笑 それなら買ってしまった方がいいなあと思い、親に頼んで6冊揃えてもらいました。私が生まれた時にはシリーズ全6冊はもう刊行されていたんです」

シリーズものでは、なぜその巻を選ばれたのかが気になりますね。くじらぐもさんにも尋ねてみると、はにかみながら教えてくださいました。f:id:taroimo0629kuro:20190726002811j:plain

「食べ物がいちばん美味しそうに描かれているのが『モモちゃんとプー』だと思うんです。食い意地の張った子どもだったんです」

そう語るくじらぐもさんが特に素敵だなあと感じたのが「モモちゃんのおいのり」という、モモちゃんがわたあめを食べたくて神様にお祈りをするお話だといいます。お祈りをしたモモちゃんは夢の中でわたあめを作るおじいさんに出会います。おじいさんの「ちきゅうぼしのぎんのおかね」という響きがすごく好きなのだと話すくじらぐもさん。「4歳のときから食べたかった」と話すモモちゃんに「6歳のときにまたおいで」と言ってくれるおじいさんにも優しさを感じるといいます。

「児童書なんですけど、内容は時々児童向けじゃなかったりしますし、書き方にも子どもが分かんないような表現が出てきたりしますけど、そこも面白いと思っていました。大人になってから読み返すのも面白いと思います」f:id:taroimo0629kuro:20190726002845j:plain

 ちいさいころから数えきれないほど読んできたという『モモちゃんとプー』 子どもの頃は読みたくなったら読んでいたそうですが、大人になってからはお部屋の整理整頓をする時に懐かしくなって読んでしまうくらいで、くじらぐもさんがモモちゃんと顔を合わせるのは年に1回程度のようです。

「1冊丸々力こぶをつくって読むんじゃなくて、どこか1章のんびり読むみたいな感じです。昔読んだ時の気持ちをちょっと忘れてたなあってのを懐かしい気持ちになりながら、思い出しながら読んでいます。この本を読み返すと、読んだ当時の気持ちとか、こういう子どもだったなあというのを思い出して、すごく楽しいんです。幼い頃の記憶も思い出しちゃったりして。子どもの頃わたあめってなかなか買ってもらえなかったなあという記憶なんかそうです。買ってもらっても結局食べきれないし、そういうのもあってあんまり買ってもらえなかったのかな。だからですかね、余計にわたあめに対する憧れがあるのは笑」

幼い頃からずっと一緒に育ってきたモモちゃんとは、毎日顔を合わせていなくても、そこにいてくれるだけで安心できるのかもしれませんね。整理整頓の時には当初の目的をすっかり忘れてしまうので困るそうですが、それもまたよし。

 

日常に隠れるファンタジーを見つけたくなる1冊。

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子どもの頃はファンタジーや想像するお話が好きだったというくじらぐもさん。そういう点でも『モモちゃんとプー』は始まりの1冊だったのかもしれません。

 タイトルの「プー」はモモちゃんの家族の黒猫。彼がある日野原に出かけると真っ白い子猫と出会います。そこにモモちゃんのお家の近くで焼き芋屋さんをしているおばあさんがやってきて、子猫は実はおばあさんが食べようとしていたジャムパンだと言うではありませんか。これにはちいさいくじらぐもさんもびっくりかと思いきや?

「大人が考えたらジャムパンが猫になるって、そんな荒唐無稽なって思うんでしょうけど、たぶんいちばん最初に読んだ時はジャムパンって猫になるかもしれないんだって思っちゃったんですね。モモちゃんが生まれた日にお菓子やカレーの材料たちがやってくるような、ちょっぴりのファンタジー要素が入った部分も、完全なファンタジーじゃなく身近な日常と結びついているのがすごく楽しいなあって」

ちょうどモモちゃんと同じくらいの年だったくじらさんは、絵本の中のモモちゃんと同じ目線で世界を見ていたのかもしれないといいます。自分の周りにもこういうジャムパンみたいな猫がいるかもしれない、自分のところにもカレーの具材が挨拶にくるかもしれない、そんな風に思いながら本を読んだ記憶というのは、誰にも奪うことのできないくじらぐもさんだけの宝物なのですね。

子どもの前に広がる世界の枠を設けず、どんどん広げていく力のある1冊に幼い頃に出会うことができるのは、とても幸せなことだと思います。 

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 実は「モモちゃん」シリーズには、子どもが読んでもよく分からないお話も数多くあります。シリアスな内容であったり、実にセンシティブな夫婦の機微であったり、その内容は様々ですが、大人が読んでも考え込んでしまうようなエピソードが印象的に散りばめられています。

なかでも「クレヨン ドドーン」は全世界のかつて子どもだった人たち全員が読むべきお話だと思います。テーマはズバリ「戦争」です。

ホントレート の取材中にここまで涙をこらえなければならなかったのは初めてです。くじらぐもさんに悟られないように鼻をすするのが大変でした。

子どもたちを不安にさせることをやってはいけないとわかっているはずの大人たちが、いつまでもいつまでもそれをやめない現状。

 

「ねえ、せんそう、どこまでくるの?えきまでくるの?かどの、おかしやさんまでくるの?おうちまでくるの?モモちゃん、こわいよ。」

「きませんよ、あのせんそうはとおいところなの。でももしそばままできたら、ママが、だめ!っておこるから、ね。」

「でも、どこかでしているんだよ、それなのに、だめ!ってママ、いわないの?はやくいわないと、みんなしんじゃうよう。」

 

このモモちゃんの問いかけに答えられる「大人」が果たして世界にどれだけいるでしょうか。絶句してしまいました。僕はたぶん黙り込んでしまうことしかできません。

「戦争の話を読んでも、子どもには分からない。でもモモちゃんの最後の問いかけは深いです。日常の話の中にふとこういう重いテーマを挟んでくるのは、ちょっと他の児童文学とは違うところかなと思います。モモちゃんの問いかけにお母さんの返答はないんですよね。こうすればいいよーという正解が書かれていません。そこは他の本でも一緒だと思うんですけど、読んでる人の判断に委ねるところがあるのかなあ」とくじらぐもさん。

読み物として最高水準の面白さを備えつつ、誰にとっても他人事ではない問題も提起する1冊。多様な表情を持つ本と幼い頃に出会えたくじらぐもさんが羨ましくてしょうがありません。「名作と言われているから」、そんな紋切り型の理由ではなく自分に子どもができたら一緒に読みたい傑作だと思います。

くじらぐもさんの中での『モモちゃんとプー』がいつまでも「撮っておきの1冊」であってほしいと願わずにはいられません。

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撮影を終えて

この人の深い部分を形成した1冊ってなんなんだろうと、お話したこともほとんどないのにそう思わせる魅力がくじらぐもさんにはあります。のんびり自らの興味の赴くままに岐阜の情報を発信している姿が魅力的で、思わず取材を申し込んでいました。

『モモちゃんとプー』は実は僕の実家にもありまして、読み聞かせてもらってた記憶があります。今回くじらぐもさんにお話を伺っている最中に、手元に置いておくために購入することを決めました。いつの間にか自分が置き去りにしていた何かがこの本の中にあるような気がしたのです。

もう一度大人になった今『モモちゃんとプー』を読み直してくじらぐもさんとお話したいと思いました。

岐阜の素敵な喫茶店に行かなくちゃ。

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というわけで第30回目のホントレートはここまで。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!

 

 

 

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