Books だらり庵

面白かった本、訪ねた本屋さん、撮った写真なんかについてだらだら綴ります。ごゆっくり。

あなたの「撮っておきの1冊」を教えてください! ホントレート32撮目

皆さん、こんにちは。

今日もだらだらしてますか?

どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。

 

「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」

そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」

 

32回目となる今回は、自分でも何をしているのかたまに分からなくなると語るほど様々な分野で活躍する男性が教えてくれた1冊です。思いがけないかたちで出会った本と著者に惚れ込み、故郷の本屋さんに置いてもらえるよう精力的に働きかけるほどだという1冊。いったいどんな「撮っておきの1冊」だったのでしょうか、早速教えてもらいましょう。

 

 

お話を伺った人

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小黒恵太朗さん

新潟県長岡市出身。1992年生まれ。幼少期よりウルトラマンをこよなく愛する。関西での学生時代にトイカメラを手にし、写真に興味を持つ。在学中に個展やグループ展を開催する中で表現や場作りの魅力に目覚める。大学卒業後、新潟にUターン。2018年9月より東京に拠点を移し、写真撮影、ライティング、プランニングにデザイン等で幅広く活躍中。特に好きなウルトラマンはセブン、ティガ、オーブ。初めての人にオススメなのはマックス、X。

 

気付きと彩りを世界にもたらしてくれた1冊。

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「大学卒業ぐらいのタイミングで、実は結構単位が危うかったのです」という思いもかけないカミングアウトからの幕開けとなった今回のインタビュー。危うしおぐろさんは夏期集中講座を受けに、京都造形芸術大学に足を運んだのだそうです。受講したのは津田大介氏による文章力養成講座。実に羨ましい講座ですが、当時のおぐろさんは特に文章に興味はなかったようで、とりあえず単位のために講義室の席に着いたのだそう。ここで彼は、その後の彼の世界観を大きく揺さぶることになる1冊と出会ったのでした。

講座の中で、自分の好きなものについてのポップ(簡易な説明、キャッチコピー、イラストなど)を作ってみようというものがあったのだそうです。ちなみにおぐろさんがPOPを書いたのは玉子焼き用のフライパンでした。

たまたまその講座におぐろさんの友人も出席しており、その人が講座でPOPを書いていたのが、おぐろさんの「撮っておきの1冊」『微花』だったのです。

『微花』はテキスト担当の石躍凌摩さん、デザイン担当の西田有輝さんが2人で手がける植物を題材にした季刊誌。2015年創刊、四季を通じて四刊され、2年目の春と夏号を刊行後、休刊。おぐろさんが持ってきてくれたのは刊行当初の6冊と、2019年4月に新たに「写真絵本」として生まれ変わったハードカバーの第2版でした。

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「集中講座で友達の話を聞いた時には、面白い本があるんだなあと思ったぐらい。『微花』という本がこの世にあるんだっていうことが分かったくらいでした」

ファーストコンタクトではそれほど強い印象を抱いたわけではなかったというおぐろさん。彼と『微花』との関係が深まるのは、講座から1、2ヶ月が経ち、先の友人が企画したトークイベントでのことでした。

友人はそのイベントに『微花』の作者2人を呼びたいと考え、おぐろさんに相談を持ちかけたのだそう。あれよあれよとイベントのお手伝いをすることになり、作者の2人とも顔を合わせたおぐろさん。助太刀はしたものの、特に興味があったわけではなかったそうなのですが、トークイベント当日に2人の話を聞いた時に「なんだこの2人の感性の奥深さは」と驚いたのだといいます。

20年近くも通り続けていた近所の道に、ハナミズキが咲いていることに初めて気が付いた時の感動を語る石躍さんに深く共感したというおぐろさん。今まで目を向けていなかっただけで、ずっと変わらず花をつけていたハナミズキの存在を知覚した瞬間に世界の彩りを知ったという話に感銘を受けたのだそう。

「この本の文章には、難解なところや哲学的なところ、芸術的なところがあって、いろんな要素が絡まり合っているんです。読み返してみると、興味を持つ段落や文章も全然違っているし、まさに季節ごとに咲く花が変わるのと一緒で、自分のテンションや感情、思いによってこんなに思考って変化するんだなということに気付くことができる本ですね」

一筋縄ではいかなさそうな感じが、おぐろさんの口調から伝わってきました。大学を卒業してから最初に働いた塾では、教室の本棚にこっそり『微花』を置いて、生徒が読んでくれないかと密かに期待していたというほどのハマりっぷり。しかし、おぐろさんと『微花』はこれ以降ますます深くなっていくのでした……。

 

世界のカラクリを教えてくれる1冊。

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 絵本のようにシンプルに、「道端にこんな花が咲いていました。こういう名前の花です」と載せているだけ、と言ってしまえばそれまでの『微花』に惹かれるおぐろさん。内容はもちろん、そのモノとしてのたたずまいやこだわりにも魅力を感じているのだといいます。

「咲いていた花の写真とその名前。だけ。それだけの本なんですけど、シンプルだからこそ物事を単純に見つめたり考えたりすることができるのがすごく面白くて。それ以上でも以下でもないシンプルな作りだからこそ、紙にもすごくこだわったそうなんです。1つのモノとしての存在感もあるんですよね。写真をやっていても時々思うんですけど、モニターを見ているのと、印画紙にプリントして見るのではなんだか存在感が違いますよね。僕が紙の本を好きなのも、ページをめくる重さや触覚も含めて楽しみたいから。紙と電子では情報の入り方も違うと思うんです。情報でもあり、モノでもある。一体なんなんでしょうね、本って。この本を眺めていると、そんなことまで考えてしまいます笑」

モノとしてのこだわりを持ちつつ、要素を極限まで削ぎ落とした作りの『微花』だからこそ、そんなことを思わずにはいられないのでしょう。大学卒業、幾度かの引越しを経た後にも、おぐろさんが手元に置いておきたかった理由がなんとなく分かるような気がしました。

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 「本の中には著者の考えたことが綴じ込んであります。それを読み返すたびに、自分がこんな考え方と生きてきたんだ、というのを再確認できるんです」と話すおぐろさんは、自分の中に深く根付いた本が自らの故郷のどこの本屋さんの棚にもないことに気が付きました。

そうこうするうちに、おぐろさんが新潟を離れ、東京に出てくることが決まります。ちょうどその頃、おぐろさんの耳に、知人が新しく本屋さんを始めるという話が舞い込んできたのだそう。これは好機と、長野で開催される湖畔のブックフェスティバル「ALPS BOOK CAMP」で『微花』の2人と知人を引き合わせることに。この時の縁で店舗での『微花』の取り扱いが決定したといいます。

「勝手に営業部隊なんかやったりして笑 ちょうど東京に出てくるタイミングで新潟に置き土産のようなことができてよかったなあと思っています」

その後、写真集をメインに取り扱う「BOOKS f3」さんにも『微花』を置いてもらえるようになるなど、だんだんと新潟にも『微花』が咲き始めているようです。

「自分がすごく好きで、世界の見方を変えてくれたと感じている本を誰かがいいねと言ってくれると、すごく嬉しいです。この本のおかげで、僕の世界はだいぶ変わりました」

嬉しそうに語るおぐろさん。お話の最後にも、とても素敵なことを仰っていました。

「この本は人生の転機だというようなタイミングで読み返してきました。引越しや転職の時なんかに、自分をリセットできる本なのかもしれません。花って、咲いて枯れて、季節が巡ってまた咲くじゃないですか。これは本当に面白い世界のからくりだなあと思うんです。でも咲いている花の種類は同じでも、全く同じ花が咲くことは決してないんです。単に写っているのがユキヤナギだと思ってこの表紙を眺めると、一輪一輪の細かな違いを見逃してしまうんですよね。言葉で固定する以前の0と1の間のグラデーションを楽しめるといいな、なんて思うんです。この本はそういう気持ちにさせてくれる、いい1冊だと思います」

真っ白な装丁だから、コーヒーをこぼしてしまうかもしれない、手垢がつくかもしれない。それでも、それだけ一緒に過ごしてきた時間が見えるってことかもしれないから、それはそれでいいのかな。そう語るおぐろさんの瞳に映る世界の彩りが、とても気になりました。

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撮影を終えて 

見たことも聞いたこともないタイプの本を前にした時、僕は大体において狂喜乱舞するか、困惑します。今回おぐろさんが持ってきてくださった『微花』の場合はそのどちらでもなく、不思議なテンションで本と向き合うという経験をしました。本当に不思議な魅力を湛えた1冊だったからです。そしてそれについて愛しげに語るおぐろさん。両者(作者の2人を含めると4者)の関係性が透けて見えるような空間が僕の目の前に確かにありました。あれはとても貴重な時間だったのではないかと、今となって思います。本屋さんに営業をかけるほどに深く愛することのできる本があることの幸せ。いい具合に空気だけでもおすそ分けしてもらえたかもしれません笑

『微花』とは、ぜひ新潟の本屋さんで巡り会いたいものだと、そう思いました。

kasuka.base.ec

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というわけで第31回目のホントレートはここまで。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!

 

 

 

 

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