滋賀の素敵な本屋さん、六月の水曜日に行ってきました。
みなさん、こんにちは。
今日もだらだらしてますか?
どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。
僕は本が好きです。
読んでいる本の量は本好きの大学生に毛が生えた程度ですが、堂々と本が好きだと言うことができます。
だからこそ、ものすごい勢いで姿を消しつつある本屋さん、ひいては読書という文化を未来に繋ごうと駆けずり回っています。
盲目的に、と言えるほどに。
「なぜ」現在本屋さんが次々と店を畳んでしまうのかということに考えを至らせることもなく。
これは対症療法的な動きです。
ひるがえって、より冷静な視点で、本・本屋の未来を読み切ろうと日々悶々としつつも、奮闘する人がいる。
そもそもの本屋という存在の在り方を微細に見つめて、システムの側から突破口を模索している。
そんな男に、滋賀の小さな本屋さんで出会いました。
「本の神様がいるのならば、僕はきっと愛されているんだと思う」
今回ご紹介するのは、そんな自負と誇りを胸に、本と向き合う本屋さんの生き様です。
とりとめのない店内
姫路から車を走らせること約2時間。
お店の名前は「六月の水曜日」
本屋さんらしからぬ店名にも興味をそそられます。
お店の前の看板に目にやると「本・本と服・珈琲・映画」とあります。
ますますとりとめのない感じがします。
石?
スクリーン?
美味しいコーヒー?
バー?
本のようですが、中身が見られません。
本と、それを抱くようにして服。
一目みてわかるように、なんとも正体の掴めない、本屋さんらしからぬお店です。
そしてそれらは、全て意図されているのだと、店主のウノさんは言います。
一体どういうことなのでしょう。
本を売らない本屋さんという在り方
上の写真は、お店に入ってすぐに出迎えてくれる本たち。
彼らは購入することができます。
それからお店の奥、畳の間に身を置く本たちもいます。
こちらはウノさんがテーマごとに選書をした、売り物ではない閲覧用の棚。
お好きなのだそうで、村上春樹はどのテーマにも姿を見せます。
階段の下に設けられた読書スペース。
案外集中できそうです。
それにしても、なぜ本屋さんなのに売らない本が置いてあるのでしょうか?
通常、本屋さんはお店に訪れたお客さんに、本を「買ってもらう」ことでお金を稼いでいます。
本を買う、買わないはお客さんの自由。
お店に入って、そのまま出ていくことも普通にあることです。
むしろそちらの方が多いかもしれません。
お客さんがお店に立ち寄る理由はそれぞれ。
移動時間の間に寄る人もいるし、もちろん本を買いに来る人も。
お店にお金が落ちるかどうかは不確定なのです。
これはたくさんの人が訪れる大型書店ならばともかく、小さな本屋さんにとっては重要な問題。
そこでウノさんは「本を売らない本屋」という方向に活路を見出そうとしています。
本を買いに来るための場所ではなく、店主による選書を「見る」ために入店料というかたちでお金を払う本屋さん。
店主は本気の本気、全力で棚を作り、お客さんはそこで最高の本との出会いを得る。
その対価としてお金を払ってもらう。
そのためにわざわざ足を運んでもらえるような本屋さんを、ウノさんは作りあげようとしています。
今はまだお金を出してもらえるような棚の域に達していないと、ウノさんは語ります。
しかし近いうちにウノさんの想いはカタチになることでしょう。
そう思わせる熱量が、ウノさんの口ぶりにはありました。
六月の水曜日が参加している「Little Staff」もそうした流れにある動きの一つです。
これは本屋を「応援する」新しいカタチの取り組みで、登録してある本屋さんを月額300円から「購読する」というもの。
自分の好きな本屋さんが選書し、投稿した画像を見るために毎月300円を払うのを高いと考えるかどうか、人それぞれだとは思います。
ただ、本屋さんを応援したいという人と、それに応えようと全力で選書をする本屋さんとの間に新しいカタチの関係が生まれるのを見るのは、とても楽しいことではないでしょうか。
選書ゾーンにある「考える」コーナー。
本屋さんの在り方についてグッと腰を据えて挑むウノさんに、ぴったりな言葉だと思います。
面白い出会いのカタチはさまざま
素晴らしい出会いを提供するために店内には、ウノさんによる多くの仕掛けが施されています。
先にあげた写真の中で僕が「?」をつけたものたちがそうです。
ここでタネ明かしをするのも野暮ですので、実際に店舗を訪れてウノさんとのやり取りでその面白さを体験していただきたいものです。
ちなみにお店の名前の秘密も教えていただきました。
さて、特色に溢れる店内。
そんな中でも特に存在感があるのが、服です。
これは、小説世界から輸入したような服を制作するbookwordrobeの清水勇気さんの手によるもの。
彼女の作る服たちに魅了されたウノさんが頼み込んで置かせてもらっているのだそうです。
大好きな本屋を守るために、書籍に興味を持ってもらうための手段として服を作り始めた彼女。
まだ販売するには至っていませんが、購入できるようになるのが楽しみです。
一体どんな本からどんな服が生み出されるのでしょうか。
自分を売るそのさきに本屋の未来がある
ウノさんはお話の中で、何度も「僕は自分を売っている」と言われていました。
自分の選書を、自分の好きだと思うものを揃えた居心地のいい空間を、激オシしたい本について語る自分の言葉を、熱量を、その全てをウノさんは「自分を売っている」と表現されたのではないかと思いました。
本に対する熱い想いは、時に書店員やこれまでの在り方にあぐらをかいていた書店にとっては耳が痛い言葉となって溢れることがあります。
でも、それはウノさんが本の未来を思うが故。
こうすればいいんじゃないかと思ったことを実際にやって、成果を見せつけることでこれからの本屋の未来を切り開こうとするその姿は、とても頼もしい。
平日の日中はお店以外の仕事をこなし、夜に店を開ける。
土日も昼からお店を開け、夜遅くまで営業している。
店休日のはずの水・木の晩には、やっぱりお店を改良するためにあちこちいじってみる。
オフは、ありません。
途方も無い情熱です。
頭から立ち上る湯気が見えるようです。
これほどまでの熱量を無視できる神様がいるでしょうか。
聞く人によっては傲慢とさえ思えるほどの「僕は本の神様に愛されている」という言葉には、神様、強運、追い風、お客さん、そして本屋の未来すら引き寄せるような、確かな力強さがありました。
本を並べる仕事はカッコイイ、そういうウノさんの立ち働く姿は、確かにカッコよかった。
17時半ごろにお邪魔して、お店を出たのは22時半過ぎ。
ウノさんの熱量を頭から浴びた体に吹き付ける外の風が頬に心地よかった。
だらり庵史上、最長の滞在時間でした。
まだまだ聞きたい話はあったし、ここに僕が書いたことも話の中の5%にも満たないと思います。
ただ全部書こうと思ったら5万字くらいいきそうなので、ここで一旦擱筆です。
お店のレイアウトの次の姿はもう固まっているのだそうで、また遊びに行った時には新しい姿で楽しませてくれることでしょう。
というわけで、今回はここまで。
今日も素敵な本と、人との出会いに感謝。
※お店の名前をGoogleマップに打ち込んでも、まだヒットしないので、遊びに行かれる際には住所を入力しましょう。