第2回 庵主の、だらだら読んだら?
皆さん、こんにちは。
今日もだらだらしてますか?
どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。
年末を目前に控え、仕事が忙しくなったからか、あまり読書できていませんが、それでも面白い本との出会いはあるもので、今月出会った中から、特に楽しかった6冊をご紹介しようと思います。
願わくは、素敵な本との出会いの一助となりますれば幸いにございます。
それではいってみましょう!
- 星野源『そして生活はつづく』
- 松尾スズキ『東京の夫婦』
- 川上弘美『大きな鳥にさらわれないように』
- 山内宏泰『写真を読む夜』
- 森下典子『こいしいたべもの』
- 羽海野チカ『3月のライオン』14巻
- これから楽しみなだらだらたち
星野源『そして生活はつづく』
音楽家、俳優、文筆家としてあらゆるところで引っ張りだこの人気者、星野源さん初のエッセイ集です(単行本は2009年、文庫化は2013年です)
「生活」が苦手だという星野さんが「つまらない毎日の生活をおもしろがる」ことをテーマに掲げたこの本、読んでいるとテレビに映る姿からのギャップに驚かされます。
端的に申し上げて、こんなにダメ人間だったのかと思わずにはいられません笑
何ヶ月も携帯電話料金の支払いをすっぽかしたり、スーパーの買い物カゴを持ったまま帰宅したり、締め切り2日前まで確定申告に手をつけなかったりと、本当にこんな人いるの?と思わずにはいられないエピソードが盛り沢山。
こんな男が、ドラマでたくさんの綺麗な女優さんとウフフしてるのかと思うと、腹も立つほど!
というのは冗談として、ぼそぼそとつぶやくようなテンションで繰り出されるユーモアの数々には、ニヤリと口角が歪んでしまいます。
基本的には誰にとっても、繰り返すだけの毎日はつまらないものですが、少しひねくれて眺めてみると案外面白がれるもんだよ、と肩の力を抜くことができます。
抱腹絶倒、大爆笑の面白さではありませんが、読んでいて「ちびまる子ちゃん」の永沢くんのような笑みを浮かべられることは確かな1冊です。
松尾スズキ『東京の夫婦』
2冊目もエッセイ集です。
著者は、星野源も所属する劇団「大人計画」の主宰を務める松尾スズキさん。
星野源を熟成庫にぶち込んで、然るのちに鍋で煮詰めてできたような大人、それが松尾スズキだと勝手に思っています笑
20歳以上離れた妻との日常を綴った、と書くと羨ましい限りで!となりそうだけれど、松尾さんの文章のテンションは、地べたを這うほどの驚きの低さです。
星野源の文章にはまだ「面白いこと言ったろ」感がまだ見え隠れすることがあるのですが、松尾さんにはそれが一切ない。
淡々と、淡々と。
自らを「喜劇人」と称する松尾さん。
若き星野源がひねくれを装備して文章を書くのに対して、ひねくりにひねくり回し過ぎた結果、パッと見ひねくれていないような、でもよく見るとめちゃくちゃひねくれてんなこのオジサン、といったことを感じさせる文章を書かれるなあと思いました。
読んでいてほっこりするということはないのだけれど、スルメを噛み続けた果てにあるじんわりした味わいに似た何かがある1冊。
川上弘美『大きな鳥にさらわれないように』
大好きな川上弘美さん。
この人はついに神話の世界に踏み込んだのか、というのが読了後の最初の感想でした。
はるか遠い未来、疲弊し、その数を大幅に減らした人類が、いくつもの小集団に分かれて暮らす世界を描いた長編小説です。
幾人もの「母」たち、幾人もの「私」、数字の名を持つみずうみの住人、登場人物たちは確かに自分たちの暮らしを営んでいるのだけれど、どこか世界に貼り付けられた記号のように感じられます。
その秘密が最終盤「なぜなの、あたしの神様」で分かった時、思わずため息が漏れることでしょう。
川上弘美は、なんと壮大な物語を生み出してしまったのか。
この人の中には僕たちとはかけ離れた大きな時間というものが流れているのではないか、そう思いました。
新しい「創世神話」オススメです。
山内宏泰『写真を読む夜』
13人の写真家たちが、それぞれどのように撮影と向き合っているのかを、写真家自身の言葉で語ったものをまとめた1冊。
「せっかくなら写真のこと、もっと聴きたい、話したい。そのための場があればいい」と考えて山内さんが企画したのが「写真を読む夜」
東京 代官山のささやかなスペースに場を設け、少人数ながら聴衆も集め、招いた写真家の話にじっくり耳を傾けるという贅沢な時間。
羨ましいことこの上ないイベント。
写真家たちは普段、撮った作品で私たちに語りかけてきます。
彼らの「言葉」も確かに彼らの世界を切り取る武器なんだと感じました。
写真も言葉も、どちらも自分と世界の対峙の仕方を表明する力を持っている。
その力を高めていきたい、たくさんシャッターを切りたい、そう思えた1冊。
森下典子『こいしいたべもの』
前回ご紹介した『いとしいたべもの』の続編です。
いやはや、やっぱり読んでてお腹が満たされます。
皆さんも、自分が食べたものの思い出って結構鮮明に残っていませんか?
しっかり咀嚼して、呑み込んで、自分の体の一部になっているからでしょうか。
食べたもので出来ている僕たちの体に、食べ物の思い出が紛れ込んでいるから、こういう本を読んでいると妙に嬉しい気持ちになるんですかね。
「カレーライス、混ぜる派? 混ぜない派?」は号泣必至です。
羽海野チカ『3月のライオン』14巻
零くんいつ将棋するの!とかそんなのどうでもいいんですよ!(将棋漫画とは)
文化祭の最終シーンではボロボロ泣いたよねえ……
これから楽しみなだらだらたち
うひひ、お正月はだらだら読みますよ〜!
というわけで、今回の「読んだら?」はここまで。
皆様と素敵な本との出会いをお祈り申し上げて、バイバイ!