第3回 庵主の、だらだら読んだら?
皆さん、こんにちは。
今日もだらだらしてますか?
どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。
今回は、新年1発目の本のご紹介。
1月はお正月休みもありましたから、実家でだらだら読み溜めしてきました。
お正月ムードでやる気がない中読んだので、負荷の少ないラインナップになっております笑
それではいってみましょう!
- 群ようこ『ネコと海鞘』
- panpanya『蟹に誘われて』
- おくがわじゅんいち『ナポリタン』
- いしいしんじ『プラネタリウムのふたご』
- 吉田篤弘『空ばかり見ていた』
- ホンマタカシ『たのしい写真』
- 平松洋子『あじフライを有楽町で』
- 西加奈子 せきしろ『ダイオウイカは知らないでしょう』
群ようこ『ネコと海鞘』
タイトルでまず……どういうこと?
表紙をじっと見て……なおのことどういうこと?
まず真剣な様子は見受けられません。
実にお正月ボケした頭にピッタリな1冊でした。
珍事続出のエッセイ集です、周りに人のないことを確認してから読むようにしましょう。
特に面白いことをしでかそうとしているわけではなく、群さんはいたって真面目に生きているだけなのに、どうしてこんなに可笑しなことばかり起こるのか。
ある意味人徳……?
panpanya『蟹に誘われて』
脱力気味に描かれたキャラクターと、背景のシャドーがかったリアルな背景が印象的なマンガです。
日常の中に紛れ込んだ違和感……ではなくどう見ても違和だらけな奴らが淡々と暮らしているのがほのかに不気味。
生きたイルカの計算機、コンベアを流れてくるココナッツをパカンパカンと叩き割るバイト、闇鍋ならぬ明鍋……書いててわけわかんなくなってきました。
少しピントの合ってない世界を覗き見したい人にオススメかもしれません。
おくがわじゅんいち『ナポリタン』
わけわかんないのが続きます。
ナポリタン狂いの著者による偏愛系リトルプレスです。
愛が暴走しすぎて、全ページこってりべっちゃりの濃い〜1冊は、まさにナポリタンそのもの。
無駄にクオリティが高いのも笑えます。
名店散歩、ナポリタン誕生秘話ぐらいはハイテンション過ぎますが、まあ許せる正当記事。
謎の連載小説「なんちゃってナポリタン本部長」にいたって真面目に読む気がなくなります(褒め言葉)
素人ナポリタンの極北を目指して試作も繰り返されます。
その妙に美味しそうな写真には、腹が立ちます。
なんか表紙めっちゃ可愛いし。
頭を空っぽにしてナポリタンに巻かれたい方にオススメです。
いしいしんじ『プラネタリウムのふたご』
ガツンと長編小説もいっときましょう。
プラネタリウムで拾われた双子の兄弟が、それぞれプラネタリウムの解説員、手品師として成長していく姿を描いた傑作です。
世界を放浪する手品師になったテンペルの身に巻き起こるドラマチックな出来事と、日中は郵便配達員、そして夜は星の語り部として静かに暮らすタットルの対比が美しい。
長い間離れ離れで暮らしていた2人が再開する場面は、号泣必至です。
双子の育ての親「泣き男」の夜空よりも優しく深い愛に心打たれます。
静かな夜に読みたい1冊。
吉田篤弘『空ばかり見ていた』
小説をもう1冊。
安定の吉田篤弘さんです。
収録された12のものがたりは、どれも流浪の床屋ホクトをキーワードに展開してゆきます。
今でいうところのフリーランスじゃないですけど、確かに床屋さんって鋏と自分の確かな腕さえあれば、国境関係なく仕事ができるんですよね。
出会いの数だけ物語が生まれるっていうのはワクワクします。
全てのホクトは同一人物ではなく、ある時は猫の姿で登場し、またある時は作中に登場する本の中のキャラクターだったりと12のものがたりが様々な形でリンクしているのも面白い。
特に好きだったのは「彼女の冬の読書」
「春から秋までふたつのバイトを掛け持ちして蓄え、秋の終わりに好きなだけ本を買い込んで」冬眠状態に潜り込むアヤトリが羨ましい。
彼女の部屋に散乱した本の海で漂流するエリアシが手にした、1冊の本からぐにゃりと現実と物語の境が不安定になる場面は、さすが吉田篤弘さん、お見事です。
ホンマタカシ『たのしい写真』
今月の写真のお勉強です。
『たのしい写真』は技術というより写真のいろんな面白いことが知りたい人にオススメです。
もちろん役に立つことも書いてあります。
パッと見て好きだなあと感じ写真を言葉で要素に分解し、自分がその写真の何が好きなのか、どういう構造がその写真を成立させているのかを説明できるようにすることで、写真の見方が変わるというのは、ぜひ実践したいと思います。
一方で、要素に分解して全く同シチュエーションを慎重に再現したとして、同じものは撮れないという写真の一回性についての話も面白かったです。
平松洋子『あじフライを有楽町で』
年末からずっとグルメエッセイ読み過ぎでは?
冬ってお腹空くんですよねえ。
平松さんのエッセイを読んでいると「生きることは食べることなんだ」という覚悟すら感じられるんですよね。
美味しいものに対する執念というのは、軽やかな文章の背後からチラ見えすることがあるんです。
本書に「冷やご飯」について書かれたものがありまして。
まずグルメエッセイに冷やご飯というチョイスがすごい。
奇をてらったのかだって?
ノンノン、甘いぜお兄さん。
平松さんは本気で冷やご飯を楽しんでいるのですよ。
もごもご噛む。なんの昂りもなく、ひたすらもごもご。すると、熱い時にはわからなかった微細な味わいが少しずつ顔をのぞかせる。あたたかな口のなか、冷えた飯を奥歯と奥歯のあいだでゆっくり押し潰すとき、じわっと味が沁みでるのを実感するのは結構楽しい。(中略)冷やごはんは、上昇も下降もせず、ただただ淡々。禅味に近いかもしれないが、いや、そんな高級なものじゃない。わたしにとって冷やごはんを食べるときの満足感は、食べものにもてなしてもらうのではなく、自分で懸命に味を探しにゆく実感にある。
どうですか、この迫力。
僕たちも冷やごはんで味を探しに出かけましょうや。
西加奈子 せきしろ『ダイオウイカは知らないでしょう』
これは1月に読んだ中で一番笑いました。
めっちゃ元気になります。
多分、今年何回か読み返すだろうなあ。
小説家の西加奈子さんと文筆家のせきしろさん、同じ言葉を使うジャンルではありながら、短歌ど素人の2人が挑む、はちゃめちゃ短歌道。
毎回与えられるお題に対して、何がどうしたらそうなったという「規格外」の作品が乱れ打ち。
毎回個性的なゲストを交えて繰り広げられる講評編?もめっちゃくちゃ笑
西さんとせきしろさんの掛け合いはもはや漫才の域です。
最後の最後まで字数を合わせて詠むことのできないせきしろさん。(チャーシューメンを3文字で数えようとしていたほど笑)
どうあがいてもシモの方に寄ってしまう西さん。
そんな2人の詠む歌は、それでもなぜか心惹かれるものがあります。
面白トークの陰に隠れがちですが、ドキッとするような歌も。
短歌ってとっつきにくいよなあ、と敬遠しがちなあなたにオススメです!
あーおもろ。
というわけで、今回の「読んだら?」はここまで。
皆様と素敵な本との出会いをお祈り申し上げて、バイバイ!